コロナ禍でのオンライン需要と超低価格スイッチャーBlackmagic Design ATEM Miniの発売もあって、一気に身近になったビデオスイッチャー、おすすめ機種は予算や用途で変わってきますので主要メーカと特徴をまとめてみました。

Roland(ローランド)

Rolandでは、ビデオミキサー(スイッチャー)のVシリーズ、AVミキサーのVRシリーズ(マイク入力、オーディオフェーダーあり)と呼んでいる。基本1M/Eのコンパクトスイッチャーしか製造しておらず、従来の放送機器メーカとは違う顧客に焦点をあてた製品が多い。

メリット

  • 国内業界使用率No1、操作パネルが分かりやすいので初めて触る機種でも操作がしやすい。
  • 液晶モニターの付いた機種が多く、設定がスイッチャー単体で完結(モニターなしでもメニューがマルチビューに出せるので本体のみで完結し易い)
  • 音声周りの充実(AUX2系統)
  • オーディオミキサーが一体となったモデルはまさにオールインワン。

デメリット

  • 放送用スイッチャーとはやや違う操作性(そこが利点でもある)
V-1HD+

コンパクトスイッチャーの定番だったV-1HDの進化版、HDMI4入力

VR-6HD

音声ミキサー内臓のオールインワン中級機、HDMI6入力

V-160HD

ハイエンド、SDI、HDMI各8入力(アサインは10)キーヤー×4、DSK×2

どのラインナップにも特に弱点の無いよく考えられたスイッチャーが多く、幅広い入力信号に対応しているのが特徴。
放送用スイッチャーのレイアウトに慣れているとやや戸惑う部分もあるが、逆にみれば、スイッチャーに慣れていない人でも直感的に操作しやすいように作られている。

Blackmagic Design(ブラックマジックデザイン)

放送業界に突如現れて、2010年代にスイッチャー(ATEM)、コンバーター(Teranex)、編集ソフト(DaVinci Resolve)などを次々とリリースし業界をざわつかせたブランド、黒魔術というネーミングも併せて胡散臭いイメージからスタートした感もありますが、ATEMスイッチャーはEcholab社、コンバーターはTeranex Systems社など、歴史あるメーカーを買収してその技術を安く世に出そうという理念をもった会社。

音響機器で言えばmusictribe社がMIDASを傘下に収めその技術でデジタルミキサーBehringer X32を出したような感じ、いずれも高性能と低価格で業界のゲームチェンジャーとなった。

最安級のATEM Miniから放送局に対応する40インプットの4M/E 8Kスイッチャー、放送局向け12g(4K) 80×80入出力のビデオルーターまで幅広く製造

メリット

  • 価格が安い、円安でも破格のプライス
  • SDK(開発キット)が公開されているので、他社の対応アプリとの連携が可能。
  • マルチビューのラベルやスイッチャーパネルの液晶表示に日本語が使える
  • 上位モデル(Television StudioやConstellationのAdvanced Panel)は放送スイッチャーの操作性

デメリット

  • とりあえず出して、アップデートでフォローと言う体制なので稀に不具合に襲われる(アップデートは慎重に)
  • 低価格なのは機能を絞っているから(主に入出力信号のカバー範囲)、その分、他メーカとの接続で相性問題がでる場合がある。
  • 上位機種は入出力(マルチビュー出力以外)はSDIのみなのでコンバーター必須
  • Miniシリーズは発熱でたまに落ちる、(直置き禁止、下部を浮かせるか、PCファン)そして設定にはPC必須
ATAM Mini Pro
ATEM Television Studio HD8 ISO 
ATEM Constellation 8K & Advanced Panel 20 

2010年代に本体のみのスイッチャーを無料のPCソフトでコントロールする(別売りのパネルあり)スタイルで放送機器業界に衝撃と価格破壊をおこしたメーカー、コロナ禍にATEM miniシリーズで一躍メジャーなブランドに、機能に対して低価格、映像信号にはRGBとYUV、3G-SDIにはLevelAとBがあることを知っている人が使う分には巷でいうほどのトラブルはない。

日本ではRolandが使用率が高く、ATEM Mini以外を見かける事は少ないが世界ではかなりのシエアを誇る。

NewTek TriCaster(トライキャスター)

大きめの配信現場では定番のNewTek社 TriCasterシリーズ、PCベースの本体に入る物理的なインプット(SDI&HDMI)に加えNDIによるIP伝送の入出力、録画、リプレイ、テロッパーも備えたまさにオールインワン。

メリット

  • PCベースなので合成や配信の制限がなく(本体の性能上の限界はある)テロップやワイプ(PinP)リプレイなど複雑な合成がオールインワン。
  • NDI(ネットワークデバイスインターフェイス)対応なので入出力の拡張性が高い

デメリット

  • 価格が高い(一番安いモデルでも本体200万位)
  • ハードウェアスイッチャーに比べて遅延が多いのでライブスクリーンなどオフラインには向かない(最後に触ったのが5年以上前なので最近はわかりません)

ソフトウエアベースのスイッチャーなのでできることが非常に多く、まさにオールインワンです。
できる事を考えたら持ち運べる中では最強クラスです。ゼロから配信環境を揃えるなら予算によっては選択肢の一つになりえるでしょう。

FoR,A(朋栄)

放送機器の老舗、ローランドがV-800出す前は朋栄かPanasonicが主流だった。

メリット

  • 放送基準の安定性
  • 最新機種ではオプションでNDIに対応

デメリット

  • 欠点はないが、今となっては価格比で候補に入りづらい。

放送基準の高い安定性にコストを掛けられる方、NDI対応のハードウエアスイッチャーを探している方向け。

その他、Panasonic・SONY・ROSS Videoなど

Panasonicはコンパクトスイッチャーは4K対応とHDの2機種、NDI対応(4Kスイッチャーはオプションにて可)、RTMP(HD版のみ)
SONYは今は放送局用大型スイッチャーのみのようです。
ROSS Vidoは海外では一定のシェアがあるようですが、日本では見かけませんね。コンパクトスイッチャーではCarbonite Black Soloが多機能で良さそうではあるのですがお値段100万からですね。

Panasonicは大型スイッチャーもKAIROSというIPを全面に打ち出したスイッチャーで評判いいですね。

まとめ

超低予算ならATEM miniシリーズ、それ以外は予算に合わせてRoland製品が基本かと思います。
その他の場合、ワイプ(ピクチャーインピクチャー)が2つ以上欲しい(Rolandだと上位の製品にしか無い)SDKを利用したソフトウエア連携や、HyperDeck(レコーダー)を連動したVTR操作がしたいなど、より高度な演出を考えているならBlackmagic以外の選択肢が無くなってきます。
※TriCasterが買えるほど潤沢な資金があるならばその限りではありません。

chapter5では現在は主にBlackmagic Design製品を使用しています(メインスイッチャーはATEM Television Studio HD8 ISO)、スイッチャー単体ではローランドも捨てがたいのですが、主な理由として先にあげたソフトウエアとの連携があります。

Blackmagic DesignのHyperDeckレコーダーや対応したソフトウエアでは、スイッチャー操作で自動再生、またテロップ送出ソフトでもソフト側で、スイッチャーのキーヤーを制御したりできます。

キャプチャー・再生ハードウエアのDeckLinkやUltraStudioも対応ソフトが多くkey / Fill出力可能なのでグリーンバックよりもきれいなオーバレイができます。

都会に比べると低予算になりがちな地方の現場では少しでもクオリテイを上げる為には省力化が欠かせません。※RolandがSDK公開してくれたらRolandユーザーになるかも知れません。

スイッチャーのそれぞれのスペックは他でも沢山紹介されていますので、メーカーごとの簡単な特徴を挙げてみました。